交通事故の示談交渉のポイント
交通事故で怪我を負った場合、怪我の治療費や入院費がかかります。
また、場合によっては、労働ができなくなり、本来手にするはずであった給料等が貰えなくなるといったこともあります。
これらの損害の賠償を加害者に求めるために、交通事故の当事者間で示談交渉が行われます。しかし、示談交渉は普段の生活と異なり、馴染みがないのでよくわからない方がほとんどでしょう。
後述するように、交通事故の示談交渉をするに際しては弁護士に示談交渉を依頼するべきですが、被害者の方も示談交渉について知っておくべきことが多々あります。
そこで、ここでは交通事故における示談交渉のポイントについて説明します。
このコラムの目次
1.交通事故における示談とは
示談とは、交通事故の加害者と被害者が行う和解を言います。
例えば、ごく単純化すれば、交通事故の被害者が、加害者に「交通事故により怪我を負ったので10万円払ってくれ」と言い、加害者が10万円を支払うことを呑んだ場合は示談が成立したと言えます。
示談においては後の証拠とするために示談書が作成され、ここに示談金の額や、被害者が以降加害者に交通事故の民事責任を追及しない等の事項が織り込まれます。
示談金の額を10万円と合意したのに、加害者が5万円しか払わないということは、被害者が認めない限り許されません。他方、加害者が10万円を払ったのに、被害者が後から追加で5万円払えということは、加害者が認めない限り許されません。
示談はあくまでも双方の同意に基づくものなので、加害者が提示した金額や被害者が請求した金額が必ずしも示談の内容になるわけではありません。被害者がもう少し高い額の示談金が妥当ではないかと述べたり、加害者がある事項を示談の内容に織り込んでほしい等の要求をしてきたりする場合があります。
このように、双方で交渉を重ねながら示談の成立に向けて尽力することになります。
示談交渉においては、通常、加害者から被害者に示談金が支払われます。示談金は被害者に発生した損害を補償する金銭です。示談金の額は加害者と被害者が合意したものになります。示談金の内訳は、大きく分けて治療費、通院費、休業損害、後遺障害が残った場合には後遺障害逸失利益等の財産的損害に対する補償と、交通事故により被った精神的なショックに対する補償(傷害慰謝料)や後遺障害が残ってしまった場合にはその精神的なショックに対する補償(後遺障害慰謝料)、被害者が死亡してしまった場合には遺族の精神的なショックに対する補償(死亡慰謝料)が含まれます。
2.交通事故における示談交渉のポイント
次に、皆さんが気になる交通事故における示談交渉のポイントについて説明します。
(1) 示談交渉はいつ始めるべきか
交通事故に遭われた場合、加害者側から治療費や慰謝料を受け取る示談交渉を行うのですが、これはいつ始めるべきなのでしょうか?
また、示談交渉するに当たって、弁護士に相談することを考えている方は多くいると思いますが、弁護士に依頼するのもいつ頃行えばいいのでしょうか?
まず、示談交渉はいつでも行えます。事故直後○日経過するまで行えない、といった事はありません。
もっとも、示談交渉を始めるのは、被害者の怪我が完治してから、又は、症状固定(治療を継続しても症状の改善が見込めない状態)してから始まるのが一般的です。
というのも、治療費や入院費等がいくらかかるかは、怪我が完治又は症状固定するまでは確定しないためです。
不幸にも被害者が亡くなってしまった場合、怪我の完治や症状固定は観念できないため、交通事故直後や被害者の死亡直後から示談交渉を開始することは可能です。
しかし、被害者遺族を考慮すると、すぐに示談交渉を始めるのは妥当ではなく、少し期間をおいてから示談交渉を行うことが多いです。
弁護士に相談すべき時期についてですが、当事務所では出来るだけ早め、治療中からの相談をお勧めします。
示談交渉前であっても、治療を受ける際にどのようなことを医者に伝えるべきか、以降の流れを弁護士が詳しく説明できるので、被害者が安心して以降の生活を行うことが可能になります。
(2) 示談金の額に疑問を抱いた場合
先述の通り、示談はあくまでも当事者の合意であり、支払われるべき示談金の額も当事者の合意に基づいて決定されます。そうすると、示談金の額が被害者の損害を補償するのに足りないと思われる場合があります。
自分が納得するのならそれで良いのですが、後からその事実を知っても、「示談金が不当だ!」として示談を取り消すことは原則としてできません。そのため、示談金の額について正当なものか否かをしっかりチェックすることが大切です。
示談金の額が正当か否かを確認するにあたり、特に注意すべきなのは、精神的損害に対する補償である「慰謝料」の請求です。慰謝料額は、傷害慰謝料の場合は通院日数、後遺障害慰謝料の場合は被害者に認定された後遺障害等級によって左右されます。死亡慰謝料の場合には一家の大黒柱が死亡したのか、被害者とどの程度の近親だったのかによって異なります。
慰謝料の額を算定する基準は三つあります(自賠責基準<任意保険基準<裁判基準)。保険会社はあくまでも営利団体のため、低い金額になる基準を用いて慰謝料を提示してくることがほとんどです。
この点、弁護士に依頼すれば、裁判基準(最も高額な慰謝料を請求できる基準)を用いて、保険会社の提示する額より高額の慰謝料を請求してくれます。
このように、示談金の額は慰謝料の算定基準により大きく左右されるため、保険会社の話を鵜呑みにすると、本来貰える額の示談金が貰えないといったことなってしまいます。
これを防ぐため、交通事故に精通した弁護士に依頼するのが得策でしょう。
(3) 当事者同士で話がまとまらない場合の裁判
示談交渉において、加害者と被害者の考える示談の内容に開きがあり、示談交渉がまとまらないといったことがあります。
被害者は、最後の手段として裁判所に訴えを提起することができます。仮に裁判で勝訴し、加害者は被害者に○円払えという判決が確定すると、加害者が被害者にその金額を支払わない場合には加害者の財産を差し押さえてお金に換えて回収するという強制執行を行うことができます。
もっとも、示談に比べて、裁判は手間や時間がかかるので、交通事故による争いを裁判で解決するよりは、当初から弁護士に交渉を依頼して、早期に有利な内容での示談成立を目指すことがベターです。
裁判に至らずとも適切な額の示談金を受け取るには、やはり交渉を弁護士に依頼することをお勧めします。
3.示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
交通事故の示談交渉においては、加害者側の保険会社から低額の損害賠償金を提示される場合が多々あります。
交通事故の示談について精通していない方だと、この金額が妥当だと思ってしまい、受け取るべき正当な金額をもらえないような示談を成立させてしまうおそれがあります。
これでは、被害者への補償が不当なものになっています。
交通事故に精通した弁護士ならば、そのような事態を回避でき、被害者と加害者の間に適切な示談を成立させることができます。正当な示談の成立のため、弁護士に示談交渉を依頼することをお勧めします。
4.交通事故の示談交渉は弁護士へ
弁護士は被害者の味方です。被害者に寄り添い、被害者にとってベストな示談を成立させてくれます。
これから行われる示談交渉が不安、加害者側が提示してきた示談金の額が不当だと考えた方はもちろん、交通事故に遭い不安に思うことがあれば、ぜひ、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
-
2020年3月31日交通事故 むち打ちで後遺障害の等級を獲得する方法
-
2020年3月23日交通事故 保険会社が治療費打ち切りを打診してくる理由と対策
-
2020年4月14日交通事故 交通事故証明書とは?何に使うの?