交通事故証明書とは?何に使うの?
交通事故証明書というものをご存知でしょうか。
これは、交通事故に遭われた方にとって非常に重要な書類です。これがないと、保険会社から保険金が受け取れないなどの事態が発生する場合があり、多大な不利益を受けることになります。
そこで、ここでは交通事故証明書とは何なのか、これは何に使うのかを解説します。また、事故に遭われた方のために、交通事故証明書の発行方法も説明します。
このコラムの目次
1.交通事故証明書とは?
交通事故証明書とは、その名の通り、交通事故の事実を証明する、自動車安全運転センターが発行する公的な書類です。
交通事故証明書には、①事故照会番号、②発生日時・場所、③当事者の情報、④事故類型、⑤人身事故か否か等が記載されます。これにより、発生した交通事故の情報を、交通事故の当事者・関係者が確認することができます。
「この証明は、損害の種別とその程度、事故の原因、過失の有無とその程度を明らかにするものではありません。」と記載があるとおり、交通事故証明書だけでは加害者・被害者の責任は決まりません。
通常は「甲」に加害者(過失の大きい方)、「乙」に被害者(過失の少ない方)が記載されることが多いので、甲が加害者、乙が被害者と思われがちですが、そうではないのです。
【交通事故証明書の見本】(自動車安全運転センターのサイトより)
もっとも、交通事故証明書は、交通事故が発生した場合に、警察官等が勝手にやってきて、作成してくれるものではありません。交通事故証明書が作成されるには、交通事故の当事者による警察署への届出が必要になります。
警察署へ届けられた事故の内容は、警察署から自動車安全運転センターに報告されます。同センターは事故当事者などからの申請を受けて、有料で交通事故証明書を発行します(自動車安全運転センター法29条1項5号、31条)。
なお、交通事故の警察への届出は、交通事故の当事者の義務です(道路交通法72条1項後段)。
注意を要するのは、届出の義務は加害者だけでなく、車両運転者である限りは被害者にも生じることです。また、車同士の衝突や人身事故に限らず、些細な物損事故でも届出をしなければなりません。
「このくらい平気だろう」と考え、交通事故の届出をしなかった場合、刑罰が科される可能性があります(道路交通法119条1項10号)。
なお、届出は「直ちに」行うことが法的義務です(同法72条1項後段)。後日に届け出ても、警察が事故直後の実況見分を実施できないため、刑事責任だけでなく、民事賠償責任の有無、過失割合などの法的問題が生じた場合に、事実を証明する方法がなくなる危険があります。必ず、事故直後に警察に連絡しましょう。
2.交通事故証明書は何に使うの?
交通事故証明書により、自分が交通事故にあった事が証明できます。そのため、交通事故証明書は様々な場面で必要になります。ここでは、交通事故証明書が必要になる具体的な場面を紹介します。
(1) 加害者の保険会社から保険金の支払いを受ける場合
交通事故の加害者は、多くの場合、任意保険に入っています。そのため、交通事故の被害者は、加害者の加入している任意保険会社から保険金の支払いを受けることができます。
被害者から保険金を請求されたときに、任意保険会社は交通事故証明書によって事故の事実を確認します。警察に事故を届出していれば、任意保険会社が直接に自動車安全運転センターから事故証明書を入手してくれます。
警察に事故を届出せず、事故証明書が発行されない場合は、他の方法で事故発生の事実を任意保険会社に対して証明しなくてはなりません。
通常は、任意保険会社の顧客である加害者側が事故発生の事実を認めており、実際に車両の毀損があれば、特に疑わしい事情のない限り、問題は生じません。
また、当初、物損事故として届出したけれど、後にむち打ちなどの症状があらわれ、
人身事故だったとわかったものの、人身事故としての届出に「切り替え」をしていないというケースでも、任意保険会社が用意している「人身事故証明書入手不能理由書」を提出することで保険金を請求することも可能です。
しかし、加害者側が事故発生の事実を認めていても、加害者と被害者が共謀した保険金詐欺を疑われて、保険金を受け取れないケースもないわけではありません。
そのようなリスクを避けるため、警察に届出をしておくことが無難です。
なお、以上の点は、自賠責保険への被害者請求についても同様です。
(2) 自己の加入する保険会社から保険金を受け取る場合
(1)の場合と同様、自分が加入している自動車保険等の人身傷害補償保険等から保険金を受け取る場合も、交通事故証明書が必要になります。
(3) 労災保険を申請する場合
労災保険とは、労働者の業務・通勤による災害に対して所定の給付を行うものです。交通事故が発生したのが、業務中や、職場への出勤途中であった場合、労災保険が適用されます。
交通事故を起因とする傷害を負った場合に労災保険を申請するには、交通事故証明書が必要です。
なお、なんらかの理由で交通事故証明書の発行を受けられない場合は「交通事故発生届」という所定の様式に記載の上、提出することで代用することも可能です。
3.交通事故証明書の発行方法
交通事故証明書の発行を申請できるのは、交通事故の加害者と被害者に限らず、保険の受取人や損害賠償を請求出来る者等、法律上の利益を有する方も含まれます(自動車安全運転センター法第29条1項5号)。
交通事故証明書を入手するのに手間がかかると思う方がいますが、以下で説明するように、簡易な手続きで受け取ることができます。
(1) 自動車安全運転センターの窓口
自動車安全運転センターに行き、所定の手続きを踏めば交通事故証明書を交付してくれます。自動車安全運転センターは各都道府県にあるので、近くに住んでいる方は直接行くのが手っ取り早いです。
担当した警察署からの報告をセンターが受領済みの場合は、即日交付してくれます。それ以外の場合は後日郵送です。
また遠隔地の事故でも、最寄りのセンターから交付申請が可能で、後日に郵送となります。
(2) 郵便振替による申請
警察署、交番、損害保険会社等には、自動車安全運転センターに向けた交通事故証明書の申請書が備え付けられています。ここに必要な事項を記載し、ゆうちょ銀行または郵便局に手数料を添えて申し込みます。
申請から10日程度で自動車安全運転センターから、交通事故証明書が届きます。
(3) インターネットでの申請
上記二つは、一定の場所に行って行う申請方法ですが、現在ではインターネットでの申請も可能です。申請してコンビニなどで手数料を支払い、入金確認後10日程度で郵送されます。
これは、自動車安全運転センターのホームページから可能になっています。
インターネットでの交通事故証明書の申請を希望する方は、自動車安全運転センターのホームページをご覧ください。
自動車安全運転センター「交通事故に関する証明書」
4.まとめ
事故が発生したときは、直ちに警察へ報告することが義務づけられており、通常は事故直後に警察が現場で基本的な事実を確認していることから、保険会社など事故をめぐる関係者は、まず、この交通事故証明書で事故発生の事実を確認するわけです。ですから、警察への届出を怠ってはいけません。
しかし、交通事故証明書は、交通事故が発生した事実を証明する証拠のひとつに過ぎませんし、警察が把握した事故のほんの概要を記載しただけのものですから、それ自体が重要書類というわけではなく、交通事故証明書の存在によって事故をめぐる法律問題を解決できるものではないのです。
したがって、交通事故証明書があっても、保険会社や加害者側との示談交渉がうまくいかないといった事態が生じる場合はおおいにあります。
そんな時は、交通事故案件に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
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