債務整理

個人再生で車は残せるの?

多額の借金を抱えて返済が出来なくなったとき、個人再生をすることで借金を大幅に減額出来ます。

しかし、借金を整理すると財産を没収されるという噂もあります。仮にそうだとしたら「借金は解決出来ても、車を取り上げられてしまうのではないか?」と不安になることでしょう。

実際問題、住んでいる地域によっては、車がなくなったら生活が非常に不便になります。
その後の生活への不安から「借金は減額してもらいたいけど、車がなくなるなら個人再生はしたくない…」とお考えの方も多いと思います。

果たして、個人再生をすると財産はどうなるのでしょうか?車は没収されてしまうのでしょうか?

1.個人再生と手持ちの財産について

個人再生とは、債務整理の手続の一種であり、裁判所を通じて、借金を(負債総額や資産の額など条件によりますが)およそ5分の1程度まで減額してもらえる制度です。

同じく裁判所を通じて行なう債務整理の手続としては、自己破産がありますが、自己破産では、破産事件を担当する裁判所が債務者の財産を処分して債権者へ配当し、それでも返しきれない借金について全額免除してもらうという流れとなります。
そのため、自己破産では、不動産や自動車といった高額な財産は没収・処分されてしまいます。

これに対して、個人再生では、債務者の手持ちの財産が裁判所(個人再生事件を担当する裁判所)によって没収・処分されるということはありません。

一般的に個人が所有する財産で一番価値が大きなものといえば住宅ですが、個人再生では、住宅を裁判所に没収・処分されることもありません。

個人再生手続には、法律上、「住宅ローン特則」と呼ばれる特別ルールがあり、一定の要件を満たせば、例外的に、個人再生の整理対象から住宅ローンを外すことが出来ます。

[参考記事]

個人再生すると住宅ローン支払い中のマイホームも守れる?

しかし、このような特別ルールが用意されていない車の場合は、いくつかの注意点があります。

先程から述べているとおり、個人再生では、裁判所による財産の没収・処分はないのですが、場合によっては、を手放さなければならなくなってしまうことがあります。

車について気を付けるべきは、どのようなケースなのでしょうか?

2. 個人再生で車がなくなるケースは?

個人再生で車を手放すことになるかどうかは、カーローンを支払い中かどうか、及び、車の所有権が債権者に留保されているか否かで変わってきます。

それぞれのケースで見ていきましょう。

(1) カーローン支払い中

所有者は通常ローン会社のため、没収される

カーローンを支払い中の場合、大抵は、ローン会社に車の所有権が残っている「所有権保留」の状態にあります(この場合、車検証の所有者欄には、ローン会社の名前が書いてあります)。

所有権保留がついている場合、債務者は、正式な車の所有者ではなく、ローン会社が所有している車を、ローンの返済を条件に利用させてもらっている状態ですので、個人再生をした場合には、車は引き揚げられてしまいます。

車が引き揚げられるタイミングは、弁護士から債権者に個人再生の受任通知が送られた直後です。

債権者から弁護士に「所有権保留付きの車なので引き揚げさせてほしい」と伝えられるでしょう。その際に引き揚げの時間と場所を決定して、指定の日時にレッカー車が来て引き揚げられます。

これに対し、所有権保留がついていない場合は、たとえローンが残っていても、車を引き揚げられることはありません。

ディーラーと提携しているカーローンの場合は所有権保留がつくことが多いのですが、銀行や信用金庫のマイカーローンを利用している場合は所有権保留がつくことは通常ありません。後者の場合は、個人再生をすることで債権者に車が引き揚げられることはないでしょう。

(2) カーローン支払い中の対応策

前述のとおり、カーローンを支払い中で、かつ、車の所有権がローン会社にある所有権留保の状態にある場合は、原則として、ローン会社によって車が引き揚げられることになりますが、次の2つの方法で、車の引き揚げを回避することが出来ます。

第三者弁済

個人再生で車の没収を免れるには、カーローンを返済してしまうのが一番確実です。
しかし、車を没収されたくないからといって、債務者がカーローンだけを優先的に返済すると、「偏頗(へんぱ)弁済」=偏った不公平な返済とみなされます。

個人再生手続には債権者平等の原則があるので、特定の債権者だけ優遇して返済するのは禁じられています。

そこで、親族などの第三者に代わりにカーローンの支払をしてもらう、第三者弁済と呼ばれる方法があります。
債務者自身ではなく、第三者による弁済であれば、偏頗弁済に当たることはありません。

ただし、偏頗弁済を禁止する趣旨が、全ての債権者に平等に回るべき債務者の財産が特定の債権者にだけ流出することを防ぐことにあることから、第三者弁済として認められるためには、単に第三者の名前で返済するだけでは足りず、その返済原資も第三者自身において負担・準備することが要求されます。

あるいは、親族などにローンを引き継いでもらう(同時に債務者自身はローンの返済義務を免除してもらう)方法もあります。
しかし、この方法を取るには、ローン会社の承諾が必須なので、別途債権者との話し合いが必要ですが、債権者が承諾してくれるという保証はありません。

また、そもそも第三者に当たるのが誰なのかについて、素人判断は危険です。
例えば、債務者と同居する親族が第三者として弁済を行なった場合には、実際は債務者自身が返済原資を出していて、家族に名前を借りただけではないか、との疑念を持たれる可能性が高いです。

手続をする前に、必ず専門家に相談をすることをお勧めします。

別除権協定

第三者弁済(あるいは第三者による債務承継)の他には、ローン債権者との間で「別除権協定」を結ぶ方法もあります。
別除権協定とは、ローンを支払うことを前提として、車の引き揚げを免除してもらう協定のことです。

しかし、カーローン会社だけに支払いを行なうことは偏頗弁済に当たり、債権者平等の原則に反するので、基本的には認められません。

単に債務者とローン債権者の2者間で合意が出来ているだけではダメで、裁判所の許可が必要になります(小規模個人再生では、他の債権者の意向も関わってきます)。

また、別除権協定が認められるのは、車の引き揚げにより債務者が収入を得られず、そのことで個人再生が出来なくなり、債権者が不利益を被る場合です。

例えば、タクシー運転手などは車が生計を立てる手段となるので、引き揚げられると無収入になり、個人再生が認められなくなる恐れがあります。そうなると債務者としては自己破産をするしかなくなり、かえって債権者が損をする可能性があります。

別除権協定が認められるのは、こうした特殊なケースに限られ、単に買い物に行けなくなるとか、駅まで遠いから不便だ、といった理由だけでは認められません。

(3) カーローンを支払い終えている

次は、既にカーローンの支払いを終えている場合です。

カーローンの支払いを終えている場合、所有者は債務者本人ですので、個人再生によって車が引き揚げられたり、没収されたりすることはありません。

しかし、車の資産価値が高ければ、保有財産額が上がってしまうので、清算価値保障の原則により、再生計画で定める弁済総額が増える可能性があります。

3.個人再生は弁護士へ相談を

個人再生では、持っている財産を裁判所に没収されることはありませんし、住宅ローンについては、住宅ローン特則という特別ルールも用意されていますが、カーローンを支払い中で、債権者に所有権が留保されている車については注意が必要です。

どうしても車を維持したければ、第三者弁済や、別除権協定を結ぶ方法もあります。

しかし、第三者弁済は、肩代わりしてもらう人によっては、偏頗弁済(実質的には債務者自身の返済と同然)とみなされる恐れもあります。また、別除権協定が認められるかどうかは、専門的な判断が必要です。

泉総合法律事務所新横浜支店では、個人再生の解決実績が豊富にございます。お車をお持ちの方で個人再生による引き上げが心配な方はどうぞお気軽にご相談下さい。

弁護士が皆様の状況を丁寧にお伺いした上で、最善の解決策を提案致します。

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