債務整理

自己破産で奨学金滞納は解決できる?

奨学金は、大学などに進学をする際に、経済的に厳しい家庭にとって大きな助けとなる制度です。
現在は2.6人に1人が奨学金を利用しており、奨学金制度が学生にとってなくてはならないものであることが分かります。

しかし、最近は奨学金の返済に行き詰まる人が多く、社会問題化しているのは周知の通りです。

奨学金の返済期間は15年~20年で、毎月の返済額は1万5,000円ほど。学校を卒業してから、非正規雇用で働いていたり、正社員でも給与の伸び悩んでいるもしくは早期離職してしまったりした、といった要因があると、実際問題、コンスタントに返済し続けるのは非常に大変です。

奨学金を滞納するとどうなってしまうのでしょうか?
また、自己破産をすれば奨学金の滞納を解決できるのでしょうか?

1.奨学金を滞納するとどうなるの?

最初に、奨学金の返済が滞るとどうなるのかを確認しましょう。

ここでは、多くの人が利用している日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を延滞した場合の流れを解説します。

(1) 督促がくる

奨学金を滞納すると、翌月から督促電話および書面がきます。
連絡は日本学生支援機構または債権回収会社からのものです。

(2) 延滞利子がつく

奨学金を滞納すると延滞利子がつきます。
日本学生支援機構の奨学金には無利子型と有利子型がありますが、滞納があればどちらも延滞利子は課されます。

2014年4月以降に発生をした場合は年利5%、それ以前に発生したものは年利10%です。

日本学生支援機構の奨学金については、滞納した時点で延滞利子が発生します。

しかし滞納から2か月以内に延滞分を支払えば延滞利子を支払う必要はありません。

実際に延滞利子が課されるのは滞納から2ヶ月後で、3ヶ月目の支払日に2ヶ月分の延滞利子が請求されます。

(3) ブラックリストにのる

奨学金の滞納が3ヶ月を超えると、信用情報機関に金融事故情報が登録されます。
いわゆるブラックリスト入りで、一定期間(5~7年)は新たな借り入れやクレジットカードを作れなくなるので注意が必要です。

ちなみに、奨学金の滞納が4ヶ月を超えると、債権回収会社に取り立て業務が委託されることがあります。
こうなると、督促頻度が増し、勤務先を知っている場合は職場に督促の電話がくることもあります。

(4) 保証人へ一括請求がいく

債権回収会社の督促にも応じない場合は、保証人に一括請求がいきます。

奨学金の借入時は保証人が必要で、現行の保証人制度は、父母、おじ・おばなどを保証人とする「人的保証」と、保証機関(日本国際教育支援協会)による「機関保証」があり、いずれか選べます。

万が一返済が滞ったとき、連帯保証人や保証人は本人に代わって支払いをしなければなりません。

人的保証を選んだ場合は、通常延滞9ヶ月以上で一括弁済を求められ、本人が応じない場合に連帯保証人または保証人に請求がいきます。

保証制度で機関保証を選んだ場合は、保証機関が代位弁済をします。平成30年の時点で機関保証を選んでいるのは49%なので、現状でも全体の約半数が機関保証を選択していることになります。

保証機関が代位弁済をしても、本人の支払い義務がなくなるわけではありません。
代位弁済後に保証機関からの一括請求が行われます。

(5) 財産の差し押さえがされる

一括弁済請求や、保証機関からの請求を無視すると、裁判を起こされます。奨学金を借りているのは事実なので、敗訴判決となります。また裁判所からの呼び出しを無視すると、欠席裁判と言ってこれも敗訴判決となります。
ここまで来ると、じきに財産の差し押さえに発展します。

差し押さえられる可能性があるのは、給与(通常は毎月の手取り額の1/4)、口座預金、不動産などです。

特に給与の差し押さえは生活苦に直結しますし、これがされると勤務先に借金の存在がバレてしまいます。
また、口座預金を差し押さえられた場合、ある日突然残高が0になってしまうということが起こり得ます。
不動産を持っていると競売されます。

2.対策1:奨学金の猶予・減額・免除制度

奨学金が返済できないときは放置するのではなく、JASSOの猶予制度を利用しましょう。
返済猶予が認められれば、期間内は返済を待ってもらえます。

JASSOは、2009年に返済を通算10年間猶予する制度を開始しました。
しかし、2020年現在、制度開始から10年以上が経過したことで猶予が期限切れになってしまった人が続出しています。

特に2019年〜JASSOから郵便物が届いた人は要注意です。返済猶予制度を利用している場合は、期限切れになっているおそれがあります。

では、猶予期間が終わってもなお返済できる状況にない場合はどうすべきでしょうか?

まずは、JASSOの各制度の利用を検討しましょう。
JASSOでは返還猶予制度だけでなく、返済が難しい方を対象にさまざまな救済措置制度が設けられています。

(1) 一般猶予

一般猶予は、奨学生本人に返還困難な事情があるときに、一定期間返還を先延ばしにする制度です。

一般猶予が認められるのは、傷病、生活保護、経済困難、失業中、妊娠・出産、新卒、災害、その他さまざまなケースを含みます。減額返還でも対応できない人のための制度です。

(2) 延滞猶予措置

現在、奨学金を延滞しており返還が困難な方で、通常の返還猶予を願い出ることができず、かつ延滞措置猶予に該当する理由がある場合に適用されます。

延滞措置猶予は災害や傷病、生活保護、経済困難、妊娠・出産などの事情がある場合に願い出ることができます。

(3) 減額返還

減額返還は毎月の返還額を減額して返済する方法です。災害、傷病、経済困難で通常の返還が難しい場合、減額することで返還しやすくする制度です。

減額返還は最長15年まで利用可能です。

(4) 返還免除

奨学生本人の死亡、または心身の障がいにより労働能力を喪失または高度の制限があり、返還ができなくなったときに適用されます。

このように、JASSOは卒業後の奨学生に対して各種制度を用意しており、制度を上手く活用すれば延滞せずに済むように仕組みを整えています。

しかし、返還猶予も減額返還もいつまでも利用できるわけではなく、期間限定です。制度を上手く活用したとしてもいずれは支払いをしなければなりません。

JASSOの各種制度を利用しても返済できない場合は自己破産を検討しましょう。

3.対策2:自己破産で奨学金は解決可能

奨学金がどうしても返済できないときは、自己破産で解決できます。
自己破産をすれば奨学金を含む借金は全て免責されるので、以後は自身への督促は行われません。

自己破産は、債務整理の一種です。
債務整理とは、返済不可能な借金を法律的に整理することで、自己破産は債務整理の中でも最終手段とも言えます(その他には個人再生、任意整理があります)。

JASSOは、個人再生と自己破産には応じていますが、奨学金の返済で行き詰っている場合は自己破産をする方が良いでしょう。

自己破産は、負債を全額免除してもらえる制度です。自己破産をして免責の認可決定がされれば以後は支払をする必要はなくなります。
その代わりに資産価値のある財産は没収・換価されますが、これといった財産がなければ没収されるものはありません。

個人再生は全額免除とはならず、借金を減額してもらう制度です。任意整理に比べて減額幅は大きいのですが、最低弁済額が決まっており、負債を100万円以下に圧縮することはできません。

どちらも認可を受けると一定期間は信用情報機関に事故情報がのるので、その間は新たに借り入れをすることはできなくなります。またクレジットカードなども作れなくなるのでその点は押さえておきましょう。
(ただし、延滞した時点で既にブラックリスト入りはしているでしょう。)

気を付けるべきは自己破産も個人再生も認可されると連帯保証人に請求がいく点です。

機関保証を選択している場合は親族に迷惑をかけることはありませんが、人的保証をしている場合は連帯保証人に請求がいきますので、その点については関係者と事前によく話し合いをすることをおすすめします。

【奨学金は任意整理できない】
任意整理は、裁判所を介さずに債権者との話し合いで減額交渉をする制度ですが、JASSOは任意整理には応じていません
任意整理は基本的に利息をカットする形で減額を行いますが、もともと奨学金は利息が低く長期返済です。また、先述の通り返還猶予や減額返還など各種制度が充実しているので、仮に任意整理をしたとしてもメリットは少ないのが現実です。

4.奨学金返済でお困りの方の自己破産は弁護士へ相談を

奨学金の滞納を放置していると、高額な延滞利子が発生する上に保証人に一括請求が行き、財産も差し押さえられる可能性があります。

JASSOの奨学金は、返還猶予など各種制度が充実しているので、延滞しそうになったらすぐに連絡をして、利用できる制度を使うのがベストです。
しかし、返還猶予は最長10年ですので、期限切れの人も出てきています。

もしどうしても支払いができないときは、自己破産をすれば奨学金の支払いも免除してもらうことができます。

泉総合法律事務所新横浜支店では、自己破産の経験が豊富にございます。自己破産の相談は無料で行っていますので、奨学金返済でお困りのことがあればお気軽にご相談ください。

お金の悩みは一人で抱え込まず、専門家と一緒に解決をしていきましょう。

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