刑事事件

盗撮をしてしまった!慰謝料はいくら?示談する方法は?

皆さんは「盗撮」と聞くとどんな行為を想像されるでしょうか?
実は、盗撮と一言でいってもその態様は様々で、適用される法令・罰則も異なります。

盗撮をしてしまった場合、まずは、自分の行為がどの法令により盗撮に当たるとされるのか、そしてどんな罰則が設けられているのか確認しましょう。

また、後悔の念から被害者に慰謝料を支払いたい、示談したいという方もいると思います。

この記事では、盗撮を規制する法令とその刑罰、慰謝料の相場、前科を避けるための示談方法について解説しています。

1.盗撮の罪

盗撮を行うと以下の条例、法律を適用される可能性があります。

(1) 神奈川県迷惑行為防止条例

迷惑行為防止条例」は都道府県ごとに制定されている条例ですが、大まかな内容は同じです。

そして、神奈川県迷惑行為防止条例では、以下の「場所・対象」に対する「行為」が盗撮とされます。

【場所・対象】
・「公共の場所」にいる人、又は「公共の乗物」に乗っている人の衣服等で覆われている下着若しくは身体(衣服等で覆われている部分に限る)(条例3条1項2号)
・住居、浴場、更衣場、便所、その他人が通常衣服等の全部若しくは一部を着けないでいるような場所にいる人の姿態(姿)(条例3条2項)

【行為】
・撮影(条例3条1項2号、2項)
撮影する目的を有してのカメラの差し向け、設置(同上)
※実際に下着若しくは身体が撮影されていなくても成立する可能性があります。

神奈川県迷惑行為防止条例違反の罰則は以下の通りです。

  • 単純盗撮:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
  • 常習盗撮:2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

(2) 軽犯罪法

軽犯罪法1条23号では、窃視の罪として、以下の「対象」に対する「行為」が盗撮とされます。

【対象】
・人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所
※条例と異なり対被写体が「場所」とされています(条例は「下着若しくは身体」)。このことから、人の下着又は身体が撮影されていなくても窃視の罪が勢威成立する可能性があるといえます。

【行為】
のぞき見ること
※のぞき見るとは、物陰や隙間などからこっそり見ることをいいます。直接肉眼で見ることはもちろん、盗撮した映像を後で見ることも「のぞき見る」に含まれると解されています。

軽犯罪法違反の罰則は以下の通りです。

  • 拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)又は科料(1万円未満の額の納付)

(3) 児童ポルノ法

正式名称は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律です。

被写体が18歳未満の児童で、当該児童の裸などを盗撮した場合は児童ポルノ法違反に問われる可能性があります。

罰則は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です。

(4) その他(刑法)

この他にも、盗撮目的のために他人の敷地(住居)に立ち入ったという場合は刑法の住居侵入罪、女子トイレに立ち入ったという場合は建造物侵入罪(いずれも刑法130条前段)に問われる可能性があります。

罰則は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。

なお、例えば、女子トイレに立ち入って盗撮したという場合、建造物侵入罪と条例違反に問われる可能性があります。

もしこのケースで懲役を科されるとしても、罰則が「5年以下の懲役(3年以下+2年以下)」となるわけではありません。この場合は重たい罪(建造物侵入罪:3年以下の懲役)又は、10万円以下の罰金の罰則が適用されます(刑法54条後段)。

2.盗撮の慰謝料

次に、盗撮の慰謝料とその相場について解説します。

(1) 慰謝料とは?

慰謝料とは、盗撮という不法行為によって被害者に生じさせた精神的苦痛(損害)の程度を金銭化したものをいいます。
「賠償金」、あるいは「示談金」(示談成立の場合)とも呼ばれます。

【慰謝料と罰金は別のもの】
慰謝料と罰金を混合される方もいらっしゃいますが、これは全く別のものです。
慰謝料は加害者の損害賠償義務の一環として、加害者が被害者に対して支払うものです。他方で、刑罰の一種である罰金は、国家が違法行為を行った制裁として個人に納付を強制するものですから、国家(検察庁)に支払う(納付)するものです。つまり、慰謝料と罰金は全く異質のものといえます。
したがって、慰謝料を支払ったからといって罰金の納付を免れるわけではありません。反対に、罰金を支払ったからといって慰謝料の支払いを免れるわけでもありません。

(2) 盗撮慰謝料の相場

盗撮の慰謝料は、法律で決められているわけではありません。そもそも精神的苦痛の度合いは個人の受け取り方や犯行形態により異なりますので、標準化できないのが現実です。

最終的には、盗撮の違法性・悪質性、被害者の年齢(未成年者かどうか)、被害者に与えた精神的苦痛の程度、被害者及びその関係者の処罰感情などの要素を考慮し、話し合いによって妥当な金額を確定させます(示談の場合)。

なお、盗撮と同じ性犯罪の中でも、強制性交等罪、強制わいせつ罪などの場合は、慰謝料が数百万に及ぶこともあります。
しかし、盗撮はそうした罪に比べると軽微な犯罪と考えられていますから、慰謝料が数百万に及ぶことは稀です。

一般的には状況に応じて「20万円~50万円」が妥当な金額だと考えられています。

3.示談の必要性と交渉のポイント

最後に、被害者と示談することのメリットや示談交渉における注意点について解説します。

(1) 示談することのメリット

被害者と示談するメリットは、以下のとおりです。

①逮捕を回避できる、釈放される可能性

警察に被害者との示談が成立したことを伝えておけば、逮捕を回避できる可能性があります。

示談成立済みということは、被害者が被疑者の謝罪を受け入れ、許したということです。よって、警察としても本腰を入れて捜査する必要はないと考えます。

また、仮に逮捕された場合でも、同様の理由から釈放される可能性が高くなります。

【警察に発覚しなくて済むケースも】
盗撮が被害者に発覚し、まだ警察には通報されていないものの「被害届を出す」などと言われているケースもあるかもしれません。
この場合、慰謝料支払いの条件(示談成立の条件)として、被害者が警察に被害届を提出しないことを盛り込むことができれば、盗撮が警察に発覚することなく収束します。
ただし、(詳しくは後述しますが)示談をするには被害者とコンタクトを取る必要がありますので、このケースでは被疑者本人が被害者の連絡先などを把握していることが前提となります。

②不起訴処分(起訴猶予)を獲得できる可能性

示談すると、起訴猶予による「不起訴処分」を獲得できる可能性があがります。

刑事処分(起訴か不起訴か)を決める権限を持つ検察官は様々な事情を考慮して刑事処分を決めるところ、示談は被疑者にとって有利な事情として考慮されるからです。

不起訴を獲得できれば刑事裁判を受ける必要がありません。刑事裁判を受ける必要がないということは、刑罰を科されることはありません。また、これにより前科も付きません。

(2) 示談方法

被害者と示談するには、示談の条件について被害者側と話し合う必要があります。
話し合うためには、当然ですが被害者側とコンタクトを取る必要があります。

ここで、すでに被害者の連絡先などを把握しており、直ちに被害者とコンタクトを取れる人もいるでしょう。

しかし、被害者と直接コンタクトを取るのは避けた方が無難です。なぜなら、お互い事件の当事者である上、示談交渉に不慣れであることから途中で交渉が頓挫する可能性が高いからです。

また、本人は真摯に反省して示談をするつもりでも、被害者と接触を図ったと疑われて逮捕されてしまう可能性もあります。

被害者の連絡先を把握している場合でも、直接交渉は避け、弁護士に示談交渉を依頼しましょう。

他方、被害者の連絡先を把握していない場合(盗撮ではこのケースが多いと思われます)は、被害者とコンタクトを取ることができません。

しかし、盗撮が警察に発覚した後であれば、警察が被害者の連絡先などを把握していますから警察から被害者の連絡先などを取得することが可能です。

ただ、警察が盗撮の加害者に被害者の連絡先などを教えることはありません。
他方で、弁護士であれば被害者の意向しだいで警察が連絡先を教えてくれる可能性があります。

弁護士であれば、被害者の意向を汲みつつも、不当な要求に対しては毅然とした態度で交渉に臨むことができます。
そのため、円滑かつ適切な条件で示談を成立させることができます。

また、弁護士は示談後のトラブルを避けるための示談書も適切に作成することもできます。

以上のことから、盗撮などの刑事事件の示談交渉は弁護士に一任することをお勧めします。

4.盗撮のお悩みは弁護士へ相談を

盗撮の示談には、逮捕や起訴を回避する、早期の釈放を見込めるなど、様々なメリットがあります。

もっとも、これまでの解説から、示談交渉を始めるには弁護士の力が必要不可欠だということはお分かりいただけたかと思います。

盗撮してしまっても、弁護士に相談すれば弁護士は可能な限りあなたの力になってくれます。

盗撮をしてしまいどうしたら良いか分からない方、被害者との示談交渉をご希望の方は、どうかお早めに示談の実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

泉総合法律事務所の「新横浜支店」は、停止しております。
皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
ご用命の方は、近隣の支店をご利用ください。
泉総合法律事務所の
神奈川県エリアの支店を探す