痴漢をしてしまった!被害者と示談する方法は?
痴漢は、各都道府県が定める迷惑行為防止条例違反、あるいは刑法の強制わいせつ罪に当たり、起訴される可能性があります。
もっとも、起訴前に被害者と示談を成立させ、その結果を検察官に提示することで起訴を回避できる、すなわち不起訴処分を獲得できる可能性もあります。
不起訴処分を獲得できれば刑罰を科されません。また、前科もつきません。前科がつかなければ、就職や仕事への影響も最小限に抑えることができます。
しかし、痴漢の加害者がいくら示談を希望したとしても、加害者が被害者とコンタクトを取ることはできず、示談交渉を始めることは困難です。
痴漢事件で示談を希望する場合は、弁護士に示談交渉を任せましょう。
ここでは、痴漢の罪の他、被害者と示談する方法と、弁護士に示談交渉を任せるメリットを解説します。
このコラムの目次
1.痴漢の罪
「痴漢の罪」と明確に規定した条例、法律はありません。
しかし、痴漢は以下の条例、法律で禁止される行為に当たり、起訴される可能性があります。
(1) 迷惑行為防止条例違反
迷惑行為防止条例では、「公共の場所」にいる人、又は「公共の乗物」に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、以下の行為をすることを禁止し、処罰するとしています。
迷惑行為防止条例は都道府県ごとに制定されていますが、ここでは、神奈川県の迷惑行為防止条例について解説します。
第3条 何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は 人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接に人の身体に触れること。(中略)
(3) 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
上記の通り、人の身体に直接触れるほか、衣服の上から触れる行為も条例違反に含まれます。
また、卑わいな言動とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな「言語」又は「動作」と解されています。
最近では触らない痴漢として、スマートフォンなどApple社製のデバイス同士で相手の連絡先を知らなくても写真などを送ることができるAirDrop(エアドロップ)機能を使ったいわゆるAirDrop痴漢という手口もあります。AirDrop痴漢はこの卑わいな言動に当たります。
【罰則】
単純痴漢:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
常習痴漢:2年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(2) 強制わいせつ罪(刑法)
痴漢は、刑法176条の強制わいせつ罪に当たる可能性もあります。
強制わいせつ罪は「わいせつな行為」を禁止し、処罰するとしています。わいせつな行為の典型は、胸を揉む、陰茎を触る・揉むなどです。
条例の行為よりもさらに悪質な行為(個人の性的自由を侵害する度合いの高い行為)は「わいせつな行為」に当たる可能性があります。
その他、条例との違いは以下の点です。
- 暴行、脅迫を手段としている(↔条例は暴行、脅迫を必要としていない)
- 痴漢の場所・人を問わない(↔条例は「公共の場所」、「公共の乗物」にいる人と限定している)
【罰則】
6月以上10年以下の懲役
2.痴漢と前科
逮捕、捜査を受けたというだけでは前科はつきません。しかし、その後起訴され、刑事裁判で有罪と認定されてしまうと、罪、刑罰、量刑の内容に関係なく前科がつきます。
前科がついてしまうことで仕事、就職にも影響が出てきます。
(1) 前科は懲役・罰金、実刑・執行猶予を問わずつく
前科は、刑事裁判で「有罪」と認定され、その後刑事裁判が「確定」するとついてしまいます。
つまり、刑事裁判でいかなる刑罰(懲役か罰金か)、いかなる量刑(実刑か執行猶予かなど)を言い渡されたかは関係ありません。
もちろん、いかなる罪か(条例違反か強制わいせつ罪か)も関係ありません。
(2) 前科がつくことの影響
①仕事への影響
前科により解雇されるかどうかは、会社の就業規則などによります。会社の就業規則で「有罪判決を受けたこと」を解雇事由としている場合は解雇される可能性があります。
免許を必要とする職業(医師、看護師など)については、「罰金以上の刑(懲役、執行猶予も含む)を受けたこと」を免許取消し事由としていることが多いです。
また、「欠格事由」に当たると、一定期間その職に就くことができません(受験自体は可能です)。
転職・就職時に履歴書に賞罰欄が設けられている場合は、前科を記載する必要があります。敢えて隠して就職後に発覚した場合は、経歴詐称と理由として解雇される可能性があります。
②家族への影響
痴漢したご本人に前科がついたことで何かご家族に不利益が及ぶということはありません。
しかし、前科がつく前の段階で、すでにテレビやネットで実名報道されている場合は、ご家族の生活に影響を与える可能性があります。
また、痴漢をしたご本人についても同様のことがいえます。
③痴漢再犯した場合の影響
再び痴漢をした場合は、「前科がある=刑罰をおそれて逃走するおそれが高い」とみなされ、逮捕・勾留される可能性が高くなります。
また、前科がついた日と今回の痴漢との日との間が短いほど不起訴を獲得することが難しくなります。
起訴された場合は罰金よりも懲役を選択されやすく、量刑も重たくなりがちです。
3.前科を避けるための示談
前科や前科がつくことによる影響を避けるには、被害者と示談し、不起訴を獲得することが必要です。
(1) 示談とは
示談とは、示談金額、支払い方法など示談の条件面について、話し合いにより終局的に解決することをいいます。
(2) 示談の効果
刑事事件においては、検察官が刑事処分(起訴・不起訴)をするにあたって「有利な情状」として扱われます。
有利な情状として考慮される結果、示談がない場合に比べて不起訴を獲得できる可能性が高くなります。
また、示談条項に「宥恕(※)条項」がついていれば、不起訴を獲得できる可能性はさらに高くなります。
※宥恕:被害者が寛大な心をもって罪(被疑者)を許すことをいいます。
(3) 示談の方法
被害者と示談するためには、被害者と条件面について示談交渉する必要があります。
そして、被害者と示談交渉するためには、被害者の氏名、連絡先などの個人情報を取得することからはじめる必要があります(痴漢の場合、被害者と面識ない場合が大多数でしょう)。
しかし、その個人情報を取得している警察が、痴漢の加害者に被害者の個人情報を教えることはありえません。つまり、痴漢の加害者自身で被害者と示談交渉することはほぼ不可能ということです。
万が一可能であったとしても、感情のもつれなどから冷静な示談交渉ができず、結局は示談交渉が頓挫してしまう可能性が高いでしょう。
そこで、加害者と被害者の間に立って示談交渉できる弁護士の力が必要となります。
弁護士であれば、警察から被害者の個人情報を取得することができる可能性があります。また、交渉の場面においても、冷静になって被害者の要望を受け入れつつ、不当な要求に対してはきちんと対応することができます。
また、示談後のトラブルを避けるためには示談書を作成する必要があるところ、弁護士であれば不備のない示談書を作成することができます。
最終的には円満に示談を成立させることができますので、示談については弁護士に依頼をすることをお勧めします。
4.まとめ
痴漢事件で被害者と示談するには、弁護士の力が必要不可欠といっても過言ではありません。
弁護士に示談交渉を依頼すれば、まず弁護士が被害者とコンタクトを取ることが可能となります。そして、示談交渉にも冷静・適切に対応することが可能ですから、示談成立の可能性も高まるでしょう。
痴漢事件で示談をご希望の場合は、まず、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
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